いかたけの備忘録

忘れっぽい

読んだ:等級制度の教科書

等級制度の教科書―働く人と組織の価値観に柔軟に対応するために <教科書シリーズ>

等級制度の教科書―働く人と組織の価値観に柔軟に対応するために <教科書シリーズ>

 

渡世の仁義で労働組合の役員をやっているが、人事の話について何も知らない事に気がついた。このままでは今後、会社側の人と話の通じない可能性があり、困る。ちょうど良さそうな本があったので読んでみることにした次第。タイトル通り教科書なので、網羅的でわかりやすく、読んで良かった。年度初めの目標を決める時期で、目標管理制度についても理解できたのがタイミング良かった。

以下、読んでいたときのメモです。

 第1章 人事制度における等級制度の位置づけ

1.1 等級制度とは

1.1.1 人事制度の基本フレーム
  • 等級制度は人事制度の骨格
  • コース制度・職群制度は「企業が期待する役割、職務範囲等により社員を区分する制度」
1.1.2 等級制度の変遷
  • 職能資格制度…職務遂行能力の大きさ等に応じて等級を区分する制度。等級制度の基軸は「能力」。
  • 職務等級制度…職務の大きさ等に応じて等級を区分する制度。等級制度の基軸は「職務」。
  • 役割等級制度…役割の大きさ等に応じて等級を区分する制度。等級制度の基軸は「役割」。
  • 等級制度の変遷…この約10年で職能資格制度の採用比率が大幅に低下し、職務等級制度・役割等級制度の順で採用比率が上昇。

1.2 等級と職務・成果の関係

1.3 採用すべき人事制度

1.3.1 経営理念と人事制度
  • 経営理念→経営ビジョン→経営戦略→人事戦略→基本フレーム→人事評価精度→賃金制度→人材育成
1.3.2 経営パラダイムと人事制度
1.3のコラム 成果と能力は別ものか
  • 成果…なしえた良い結果
  • 能力…物事をなしえる力。はたらき

第2章 等級制度の特徴

2.1 等級制度の骨格比較・2.2職務等級制度導入のメリット・デメリット

A 職能資格制度
  • 基軸:能力(能力基準)。
  • 多くの企業が順調に成長・発展した高度成長期や安定期に普及。
  • 主なメリット:①人事異動・職務変化に適し、組織の柔軟性が保てる。②資格重視でポスト不足に対応しやすい。③ゼネラリスト育成に適する。④職務評価なしでも運用可能。⑤社員にとって安心感がある。
  • 主なデメリット:①資格等級と職務内容にズレが生じやすい(職務が低い)。②年功的運用に陥りやすい(資格等級のモデル年数に達すると昇格、降格しない等)。③中高齢者が多いと適さない。④賃金と成果を比較し、若年層の過払い、中堅層の過少払い等の賃金の賃借が発生する。⑤総人件費は高めになる。
B 職務等級制度
  • 基軸:職務(職務基準・仕事基準)
  • 1960年代の大手企業の現業部門の技術職で普及。近年は成果主義を徹底したい企業が採用。
  • メリット⑤の総人件費が低めになる事を目的に導入する企業もある。(職能資格制度からの切替など)
  • 主なメリット:①職務と賃金がマッチし合理的。②専門家育成には効果的。③職務内容が明確になる。④不要職務は抑制される。⑤総人件費が低めになる。
  • 主なデメリット:①組織・職務が硬直化しやすい。②ポスト不足の対応が困難。③職務評価にノウハウが必要。④高い運用力が要求される。⑤職務が変わらないと賃金が上がらない。
  • デメリットが問題になりやすいが、そういう制度が当たり前だと考えられる企業が採用すべき。
C 役割等級制度
  • 基軸:職務(役割基準)
  • 主なメリット:①役割と賃金がマッチし合理的(Bと同じ)。②自らの役割設定・拡大で、変化に対応。③役割が明確になる。④役割評価が比較的容易(Bの職務評価に比べて)⑤役割重視でポスト不足に対応可能。⑤総人件費は若干低めになる。
  • 主なデメリット:①制度導入当初から役割等級の信頼性を確保するには、ノウハウが必要。②役割評価表のメンテナンス等、運用力はある程度要求される。③役割の設定・拡大を好まない社員は不利になる。
  • 役割:(1)企業が組織に求める基本的に果たすべき重要事項、(2)組織がポスト等に応じて社員に求める基本事項に加え、(3)時代の変化への対応、(4)企業・組織・社員のレベルアップを目指し、社員自らが設定し・拡大する基本的重要事項
  • 自律的人材:自分が何をすべきかの方向性を定め、他者から指示・コントロールされなくても責任感を持って主体的に物事を進めていく人材。

第3章 職能資格制度 第4章 職務等級制度 第5章 役割等級制度

  • ※第2章の内容を深掘りした箇所なので省略


第6章 人事諸制度との連携

6.1 等級制度と人事制度全体の関係

6.1.1 職能資格制度と人事制度全体の関係
  • 経営理念・方針等を基に期待する人材像を導き、能力を基準として評価、処遇、育成を一体化する。
  • 能力の伸長を重視するため、人材の育成を最も重視する。
6.1.2 職務等級制度と人事制度全体の関係
  • 経営理念・方針等に連動した計画・目標の達成状況を評価して処遇に結びつける。
6.1.3 役割等級制度と人事制度全体の関係
  • 経営理念・方針等から展開された部署の業務計画等を基に組織・個人の役割を検討し、目標の設定・遂行により役割を拡大し、処遇にも結びつける。

6.2 等級制度と賃金制度

6.2.1 職能資格制度と賃金制度
6.2.1.1 月例賃金
  • 業務遂行により、能力が伸長するという前向きな思想。
  • 定期昇給:生計費増加を保証する機能、社員の能力習熟を補償する機能がある。
  • 職能資格制度が年功的運用に陥りやすい理由は以下の3点による。
  1. 期待モデル年数通りに昇格させてしまうなど、昇格を甘くしてしまう。
  2. 等級に滞留しても受け取れる習熟昇給額が、能力が大きく新調した際に受け取れる昇格昇給額よりも大きい。
  3. 職能給表の上限賃金と1つ上の等級の初号賃金が重なる重複型賃金となっている。
  • 能力主義を強めるために賃金では以下の対策ができる。
  1. 習熟昇給額を小さく、昇格昇給額を大きくする。
  2. 標準習熟上限賃金を低くする。
  3. 張出昇給額等を小さく、できれば廃止する。
6.2.1.2 手当
  • 職能資格制度では手当が多くなる。役職と職能による賃金が一致しないため役職手当が必須。
  • 生活関連手当(家族手当・住宅手当等)についても支給する傾向にある。
  • 資格取得による能力向上を理由として資格手当も支給する傾向にある。
6.2.1.3 賞与
  • 職能資格制度では職能給をベースに賞与支払額を求める場合が多い。
  • 賞与支給額=(職能給+役職手当)×支給月数×等級別乗率×人事評価率
  • 発揮した能力が賞与額に反映されないケースが出るため、役職別乗率を反映する等の工夫が必要となる。
  • 賞与支給額=(職能給×等級別乗率+役職手当×役職別乗率)×支給月数×人事評価率
6.2.2 職務等級制度と賃金制度
6.2.2.1 月例賃金
  • 誰が担当しても能力に関係なく、職務に応じて賃金が決まる。
  • 賃金カーブ(年齢-賃金)では、
  • 職務給は早めに立ち上がり、一定の経験年数からは余り上がらなくなる。年齢と職務に関係が無いため。成果を上げると高い賃金を支給する。
  • 職能給は右肩上がりになり、職務給のカーブよりも高いラインを描く。
6.2.2.2 手当
  • 職務資格制度では一般的に手当が少なくなる。職務に役職が含まれるため役職手当は無し。職務を基準として賃金を支給するので生活関連手当も支給されにくい。
6.2.2.3 賞与

 賞与支給額=(職務給 or 等級ごとの固定額)×支給月数×等級別乗率×人事評価率

6.2.3 役割等級制度と賃金制度
6.2.3.1 月例賃金
  • 同じ職務でも役割を拡大することで役割給を変動させても良いという思想。
  • シングルレート:同じ等級では全て同じ賃金。昇格・降格のインパクトが大きい。
  • レンジレート(範囲給):等級ごとに上下限を定める。昇格・降格のインパクトを下げる。
6.2.3.2 手当
  • 職務資格制度と同様に手当は少なくなる。
6.2.3.3 賞与
  • 賞与支給額=(役割給 or 等級ごとの固定額)×支給月数×等級別乗率×人事評価率
6.3 等級制度と目標管理制度
6.3.1 目標管理制度の設計および運用に関する課題
  • 目標管理制度:経営方針・経営計画・部署業務計画等に基づき設定した、個人目標の達成度を評価し、処遇に反映する制度
  • 以下の目的で運用される。
  1. 経営方針・経営計画等と個人目標をリンクさせ、経営計画等の機能を高める。
  2. 個人の職務、役割・成果への関心を高め、目標達成意欲を高める。
  3. 具体的な個人目標を立てて実行することにより、能力の向上につなげる。
  4. 評価内容を自分で考えることにより、職務・役割・成果の水準を明確にする。
  • 以下の課題と対策がある。
  1. 短期的な成果を追求し、本質的な生産性向上を怠る。→生産性向上の目標を設定させる。
  2. 中長期的な成果のため種まきをしなくなる。→期間内での達成度を目標に設定させる。
  3. 結果を重視してプロセスを軽視しがち。→プロセスそのものを目標に設定させる。
  4. 組織全体の協調的活動をしなくなる。→協調的活動をするよう組織目標を分担させる。
  5. 人材育成が軽視される。→人材育成の目標を設定させる。
  • 目標設定時点で成果を特定することが重要。
  • 社員の等級に照らし合わせてふさわしい目標を設定する必要がある。
6.3.2 職能資格制度と目標管理制度
  • 職能資格制度と目標管理制度を運用するのは無理がある。
  • 職能=能力に応じた職務・役割を当てはめる翻訳作業と個人目標に展開する作業が必要。→長の負担が大きい。
6.3.3 職務等級制度と目標管理制度
  • 目標管理制度との相性は最も良い。
  • 職務から目標への展開が必要であるが、職能資格制度より大幅に作業は少なく、翻訳作業も不要。
6.3.4 役割等級制度と目標管理制度
  • 目標管理制度との相性は良い。
  • 職務から目標への展開は職務資格制度と同等であり、翻訳作業も不要。

6.4 等級制度と人事評価制度

6.4.1 職能資格制度と人事評価制度
  • 伝統的な職能資格制度では人事評価は以下の3つの大項目で行う。
  1. 職務遂行実績(成績評価):与えられた職務の遂行度合い。仕事の量・質、組織運営、職場管理、工程、管理業務改善、部下等の指導、といった項目の実績。
  2. 職務に対する関心・意欲・態度(情意評価):やる気の評価。規律性(規則、習慣、マナーなどの遵守度)、責任性(所掌業務を遂行する意欲)、協調性(他人の業務に関心を持ち、支援を行う意欲)、積極性(業務を改善する意欲)で評価。
  3. 能力:保有能力(等級で身につけておくべき知識・技能)、発揮能力(保有能力を通じて現れた能力)
  • 重視されるのは能力評価で、上記等級では成績評価、下位等級では情意評価のウェイトを上げる。
  • 伝統的な人事評価項目には以下の課題と対応策がある。
  1. 上位・中位等級には実績・成果を求めたい→目標管理制度を導入して成果評価を行う。
  2. 企画力・判断力といった能力評価項目では一度判断した結果を覆しにくい。→行動などから評価する。
6.4.2 職務等級制度と人事評価制度
  • 目標管理制度に基づく成果評価が大きな割合を示す。
  • 成果主義を強くするのであれば、成果評価のウェイトを上げ、成果主義を弱めるなら成果評価のウェイトを下げる。
6.4.3 役割等級制度と人事評価制度
  • 相性が良いのは目標管理制度に基づく成果評価。
  • 行動評価では高業績者の行動特性(コンピテンシー)から評価基準を社員に示すことで役割の拡大を図ることができる。

6.5 等級制度と人材育成

  • 人材育成:社員の能力を向上させ、高度な職務や役割を与え、さらに能力を向上させる。
  • 人材育成と相性が良いのは①職能資格制度→②役割等級制度→③職務等級制度
  • 職能資格制度では昇格に必要な能力が職能要件書に明示されている。
  • 職務等級制度では職務記述書で職務内容は明確だが、能力ははっきりしない。
  • 役割等級制度では役割基準書に期待される事項が記載されている。どんな場面、どんな職務で果たしていくかは上司による機会提供・助言といった支援が求められる。

6.6 等級制度と教育体系

  • 教育体系:等級に求められる教育研修を体系的に整理したもの。
  • 階層別教育体系:等級・役職・社員層等の区分に基づく教育体系。
  • 専門(職種別)教育体系:コース・職群、職種の区分に基づく教育体系。
  • 教育体系に関する課題には以下のものがある。
  1. 教育体系と人材育成の考え方が乖離している。
  2. 全社員が教育研修を受講するスタイルの階層別教育体系だけを作っている。
  3. OJT・OFF-JTの狙い・効果などを整理せずにOFF-JTを羅列した形で教育体系を作っている。
  4. 教育体系に記載してある研修を受講させても、期待した効果が出ていない。
  • 職能要件書、職務基準書、役割基準書の定義と教育研修をつなぐスキル体系が無いと教育研修の効果が上がりにくい。

6.コラム 人材育成に熱心な企業の等級制度

  • 人材育成に熱心である企業は役割等級制度を導入する傾向がある
  • 教育研修に即効性を求めるのは無理がある。
  • 集合研修では能力の高い社員が更にレベルアップし、低い社員は余りレベルアップせず、実力差を拡大させる。

第7章 複線型人事制度

7.1 複線型人事制度とは

7.1.1 複線型人事制度の定義
  • 複線型人事制度:専門的な業務を遂行する社員を専門職として処遇するなど、ライン管理職以外のキャリアパスを提示し、それに応じた処遇をする制度。
  • 単一型人事制度:ライン管理色として高い東急・役職に上がるキャリアパスのみを用意し、処遇す制度。
  • 広義の複線型人事制度:管理職・非管理職非正規社員の区分する。非管理職について転職のある基幹職と地域限定勤務の地域限定職に区分したり、職種別に区分もする。
  • 狭義の複線型人事制度:管理職のみ複線型
7.1.2 複線型人事制度導入の背景
  • 企業側の理由として以下のものがある。
  1. 専門的能力の高い社員をライン管理職にせず高付加価値業務に従事させるため
  2. 組織のフラット化、PJ推進により管理職の数が減少するとともに、人員の中高齢化に伴い管理職ポスト不足となったため専門職のポストを用意する必要があった。
  3. 処遇に関して一律の管理をするよりも社員から納得が得やすい。
  4. 人件費を適正に管理するため。
  • 社員側の理由として以下のものがある。
  1. 部下等を持たずに自分の担当業務に集中し、企業に貢献したいと考える社員がいるため。
  2. 社内で活躍するための選択の余地が増えるため。
  3. 管理職教育を行っても部下等への指示・指導・育成が得意でない社員がいること。

7.2 職能資格制度におけるゼネラリストの位置づけ

  • ゼネラリスト:複数分野において一定以上の知識を備え、数年の期間で実績を上げ、多数の部署で活躍できる人材のこと。(公務員の「キャリア組」が典型例)
  • ゼネラリストに対して専門分野を持たない「何でも屋」という誤った酷評がある。
  • 職能資格制度では、非管理職時代に担当業務の課題を解決するスペシャリスト的な業務とゼネラリストとしての管理能力を習得する。
  • 本人の能力、適性に応じて管理職(ゼネラリスト)か専門職(スペシャリス)ト)に分かれていく。
  • ゼネラリストとして活躍するためには以下のことが必要。
  1. 中堅になるまで良質な専門業務を複数こなしスペシャリストとしても実績を上げること。
  2. ゼネラリストとしてのスキルを早めに習得、実践し自信をつけること。

7.3 職能資格制度と複線型人事制度

  • 職能資格制度で複線型人事制度を実現する場合、以下のポイントが重要。
  1. 社員の能力・適性を生かすという前向きな考え方で制度を設計・運用する。
  2. 資格等級を共通に適用する。等級基準(人物像)は同じレベルにする。
  3. 賃金・賞与・人事評価に余り格差をつけない。
  • 一般的にライン管理職、専門職、専任職を設定する企業が多い。
  1. ライン管理職:組織の指揮・統括部下の育成等に関する業務遂行能力を高め、組織の業務計画等を策定・遂行し、業績の向上に貢献する。
  2. 専門職:高度専門能力を高め、組織業務計画等に沿って新事業創出、新製品の研究開発等の高付加価値業務に従事し、大きな実績を上げる。
  3. 専任職:特定分野における能力を高め、効率化・ノウハウの蓄積を行い、社内のエキスパートとして大きな実績を上げる。

7.コラム 組織のフラット化が目指すもの

  • 組織のフラット化は稟議の迅速化、管理職の減、実稼働人員を増やし、スペシャリストを増加させるので、業績の向上をもたらす。

第8章 コース別管理

8.1 コース別管理の必要性

  •  コース別管理:期待する役割、職務範囲等により区分し処遇する制度。
8.1.1 コース別管理の代表的な制度
  • 総合職・一般職の職群制度
  • 勤務可能な場所で区分する制度(グローバル金峯・全国勤務・特定エリア・地域限定)
  • ライン管理職・専門職・専任職のコース制度
  • 社員全体を多くのコースに区分する制度:コースごとに等級・賃金・人事評価を区分する。
  • 職種別人事制度:営業・研究開発・設計・生産・品質保証など職種で区分する。
8.1.2 コース別管理の必要性
  • 企業規模拡大により、期待する役割、職務範囲等を区分した方が合理的出あれば導入する。
  • 社内で期待する役割、職務範囲が大きく異なるグループが複数存在する。
  • 職群・コースのそれぞれにあった社員を採用する方が合理的である。
  • 社員を区分化して人件費を適正化する。
  • 社員に対して、社内でどのように活躍したら良いかなどのキャリアパスを提供できる。
  • 社員の個別事情(家庭状況、育児、介護)に対応できる。

8.2 総合職・一般職の職群制度

  • 総合職:企業の基幹的業務を担当。能力伸長により昇格。高い役職に通いて企業に貢献する。
  • 一般職:定型的業務、非定型的業務を中心に担当し、能力伸長により複雑な業務を担当し、熟練業務を担当することや、効率的な業務ウ運営の中心になる。
  • 職群転換基準書に記載されている条件を満たせば、職群を変更することが可能。
  • 職群で別の等級制度を採用することはそれほど多くない。
  • 職能資格基準書の期待する人物像は職群の間で明確に異なるはずである。
  • 人事評価制度では総合職は成績評価を重視、一般職は情意評価を重視するなど。

8.3 地域限定社員制度

  • 総合職:海外・国内どこでも勤務する可能性があり、企業の基幹的業務を担当
  • エリア総合職:転居を伴う人事異動なし。企業の基幹的業務を担当
  • 一般職:転居を伴う人事異動なし。企業の定型的業務・補助業務を中心に担当
  • 総合職とエリア総合職では昇格できる上限の等級・就くことのできる役職が異なり、育成の方針も異なる。
  • 職群の転換については認める回数や頻度および経路を慎重に考えることが必要。

8.4 本格的なコース制度

  • コース基準書:コースごとに期待する主な役割、職務、育成方法、役職、移動について整理したもの。
  • 管理職:ゼネラリスト、専門職:スペシャリスト、専任職:エキスパート、生産業務・品質管理など:テクニカル、実務的業務:アソシエイトといったコース分けを行う。

8.5 職種別人事制度

  • 職種:同様の考え方・目的・進め方、同様に知識・技術・技能が求められる仕事の種類のこと。
  • 以下の目的で導入される。
  1. 職種の専門性を高度化する。
  2. 仕事の実態に合った制度で処遇するため。
  3. 職種ごとの賃金等に世間水準とのバランスをとること。
  • 職種の変更はしない前提。
  • 職種別に職務基準が必要。
  • 人事評価では同じ等級で職種間にレベルのばらつきが無いようにする必要がある。
  • 目標管理制度における目標に比率の設定に工夫が必要
  • 職種ごとに異なる等級制度を設定することも可能。

第9章 昇格と降格

9.1 職能資格制度における昇格・降格の課題

  • 職能資格制度では能力が向上したので企業への貢献度が上がるはずなので賃金が上がる。
  • 職能資格制度では通常、能力が下がらず、降格することはないという考え方。→能力の劣化に対応できない。
  • 標準的な昇格年数を経過したことで昇格させてしまう運用になりがち。
  • 「職能資格基準書」の記載が曖昧だと昇格が甘く、降格ができづらい。

9.2 職務等級制度・役割等級制度における昇格・降格の課題

  • 人事異動により価値の低い職務、役割を担当する事がある。
  • 降格人事を深刻に受け止める企業では職務等級制度・役割等級制度を導入しない方がいい。
  • 成果主義人事制度で昇格後に成果を上げることができるかはよく検討する必要がある。

9.3 昇格制度の設計

  • 卒業方式:現等級の能力を十分に満たしたら昇格。
  • 入学方式:上位等級の能力を満たす可能性があると昇格。
  • 昇格と在級期間について、昇格までの最短年数を設定する。飛び級を設定する。在級期間を満たせば昇格させる。などがある。
  • 在級期間ではなく能力・職務・役割によって昇格させるべき。
  • 職能資格制度では企業業績を昇格人数枠に連動させるという考え方もある。
  • 職務等級制度ではポストの数が昇格人数枠となる。業績拡大でポストが増えると昇格人数も増える。
  • 役割等級制度でも職務等級制度と同様に業績拡大で役割が拡大し、昇格人数が増える。
  • 昇格基準の設定、昇格の手順の明確化、昇格者の公表が重要


9.4 降格制度の実態

  • ※アンケート結果なので省略

9.5 降格制度の設計と実施手順

  • 降格の定義の明確化:降格の対象範囲、コース・職群毎の最下位等級の取り扱いを明確にする。
  • 降格の目的と効果の明確化:期待する効果について明確にすると共に、傷病等で等級に求められる職務を遂行できない者を対象とするか等を検討する。
  • 降格基準の設定および公表:一定期間の人事考課結果が一定水準以下など、客観的でわかりやすい基準が求められる。
  • 降格予備軍の選定と警告:1年または半年前の時点で降格の警告を出す方が、奮起を促すためには良い。
  • 上司等による降格予備軍の改善計画作成と日常支援:上司による改善計画の作成とフォローを行い、人事部門に報告する。
  • 降格の審議・決定:これまでの指導内容、現段階の課題と解決策、今後の指導方法、降格後の職務案、人事異動の必要性などについて上長→人事部門経由で審議会に報告。最終的には審議会等で決定する。
  • 降格の通知:上長経由で本人に通知。降格後の1年間で大きな改善が見られた場合には、敗者復活させる制度を用意した方がいい。

9.6 降格制度に関する注意事項

  • 降格制度導入に当たって労組との事前協議が必要。
  • 就業規則等に降格制度について明記する。
  • 降格制度の公開と降格基準を明示する。
  • 適正に運用されるように仕組み作りを行う。
  • 賃金の減額について制度設計時に十分に考慮する。

第10章 これからの等級制度のあり方

10.1 人事制度の改定目的

  • 賃金水準を是正したい
  • 賃金等の配分根拠の見直したい
  • 人事制度の考え方を見直したい
  • 人事制度のレベルに合わせた制度としたい
  • 社員への影響付与
  • 経営・採用・退職との関係
  • 人事制度の成熟度が増すと、「経営戦略の実現を支援すること」「人材の競争力を強め人的資本の価値を高めること」に2点に集約されてくる。

10.2 人事制度の改定目的と等級制度

10.2.1 経営戦略の実現を支援する
  • 経営理念→経営ビジョン→経営戦略→人事戦略→基本フレーム→人事評価制度→報酬制度→人材育成の関係がある。
  • 企業にとって最適な等級制度を導入する必要がある。
  • 職能資格制度と職務等級制度の併用や職務等級制度と役割等級制度の併用といったハイブリッド等級制度もある。
10.2.2 人材の競争力を強め人的資本の価値を高める
  • 自律的人材を育成するためには役割等級制度を導入することが最適。

10.3 等級制度と経営効果

  • 人事制度を改定する際には企業はどのような経営上の効果がもたらされるかを明確にしておく必要がある。
  • 中長期的な業績貢献を期待して、人事制度を構築するケースが多い。