いかたけの備忘録

忘れっぽい

2023年の本best3

Best3以外はこちらです。

ikatake.hateblo.jp

大災害の時代

www.iwanami.co.jp

こちらについては、記事にしているので、お読み取りください。

ikatake.hateblo.jp

 

新説 徳川家康

www.hanmoto.com

400ページ、注釈500個の分厚い新書。注釈500個の内、9割ぐらいはソースの提示*1なので、追加・捕捉情報としての注釈はそんなに多くない。

これまでの研究で提示されていた説に対して、最近見つかった一次史料などを用いて、自身の説を提示する。という流れで記述が進んでいきます。書状を引用している箇所も多いので、ちょっと読むスピードが遅くなりがちですが、引用の後に内容の概略が記載されているので、フワッと読んでおけば良いと思います。

歴史を研究している人の本を、これまで余り読んだことがありませんでしたので、歴史の研究者が考えていることや研究の過程の一部を覗き見るような感覚で読むことができて新鮮でした。

 

ビヨンド!

www.hanmoto.com

KDDI労働組合が20周年記念に発行した本。周年行事で周年誌を作ることは多いと思いますが、一般書籍として出版したのは珍しい事例だと思います。

KDDIKDD、DDI、IDOの3社が合併してできた会社ですが、合併元の旧3社のうち労働組合があったのはKDDのみでした。そのKDD労働組合が合併の前に実施した委員長を選ぶ選挙で、ユニオンショップ協定*2の維持にこだわらない委員長候補が当選します。会社との交渉で、合併後のユニオンショップの維持が難しそうということを反映しての選挙結果ですが、オープンショップの組合として合併後に地道な組合員の加入促進活動が続きます。

合併後の組合員加入促進活動は様々あり、組合員の少ない職場に出向いて説明会をするのは勿論のこと、新規加入者の組合員費を期間限定で下げたり、血管年齢を測るイベントをやったりといった取組が掲載されています。通常、こういった悪戦苦闘の内容は労働組合の内部で記録しているに留めていることが多いのですが、一般の書籍として掲載しているのは勇気が必要になったと思われます。

ただ、各種の加入促進活動でも組合員が大量に増えるということはなく、むしろ以下の2点のような外的な要因によって組合員が増えた時期があった事も記載されています。

  1. 労働組合があった会社を吸収合併
  2. 会社の事業再編

1.の例で記載されているのは電力会社*3が作った通信会社であるパワードコムを吸収合併した際に、パワードコム労働組合を統合した事例です。数年後には旧パワードコム労働組合の出身の方がKDDI労働組合の委員長に就任していたりと、スピーディーな労働組合の統合ができたように読めました。

2.の例では会社が「○○事業の再編を行う」と対外発表した際に、不安を募らせた○○事業の従業員が労働組合に加入することで、労働組合と会社が交渉している内容を得ようとしたり、自分たちの声を労働組合経由で届けたり、といったことを考えてのことと思われます。

また、2.に関しては「色々な加入促進活動をやっても結局、自分の立場がピンチにならないと組合員として加入してくれないのか…」という厳しい現実を垣間見ることができました。

厳しい局面が続いても諦めずに組合活動を継続し、また新しい世代へと、バトンをリレーしていったことは頭の下がる思いです。

*1:「何年何月何日 ○○宛××書状」や、既存の書籍の何ページか、など

*2:社員は基本的に組合員ですよ。という協定

*3:厳密に記載すると、旧一電…地域独占の電気事業会社