いかたけの備忘録

忘れっぽい

読書感想文「負け戦でござる。北九州豊前国敗者列伝」

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Twitterで一方的にフォローしてる人が「出張で見知らぬ土地に行ったときに書店で郷土誌のコーナーに行くと面白い」という話をしていて、確かにそれは面白そうだなと思って、こないだ北九州に行ったときに実際にやってみた。

本に載っている人は以下の通りで、平安時代から幕末まで、広く捉えている。豊前国とのつながりも人物それぞれで、その土地で生まれた人、他の土地で生まれて豊前で死んだ人、ちょっとゆかりが会った人など。様々である。

  1. 藤原広嗣
  2. 平 清経
  3. 杉 重良
  4. 宇都宮鎮房
  5. 後藤又兵衛
  6. 毛利勝永
  7. 細川興秋
  8. 佐々木小次郎
  9. 犬甘兵庫
  10. 小宮民部
  11. 郡 長正
  12. 杉生十郎

ちなみに私が本を読む前から知っていたのは後藤又兵衛毛利勝永で、大河ドラマ真田丸の影響ですね。戦国時代だと黒田長政に関連した人が多く、その流れで兵庫県のうち播磨国にゆかりのある人もちらほらいた。北九州と播州の意外なつながりを発見できて面白かったです。

あと、佐々木小次郎って、宮本武蔵と対決した記録には「巌流」としか載ってなくて、佐々木も小次郎も(それなりに理由付けはあるものの)後で付いた名前だとしてビックリしました、

小倉で買った本は3冊あり、1冊目に読んだ本が「これぞ郷土史」といった感じの本で良かった。

 

ゼンリン・ミュージアム(北九州・小倉)に行った。

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北九州に行く用事があったので、ついでに小倉駅近くのゼンリンミュージアムに行った。伊能忠敬(とその仲間たち)が作った地図の原寸大コピーなどがある。

日本に来た宣教師たちが使っていた地図などがあり、最初の頃は西日本が中心で、大阪・京都より東は扱いが雑。九州には教会があったり、大阪・京都は首都なので丁寧に書かれている。後は銀鉱山のあった石見もちゃんと書かれている。地図を通して地図を作った人や使う人の目的が透けて見えるのが面白い。

私営企業がやってる博物館なので、入場料が1000円と結構するが、相応の価値はあると思う。自分の住んでるところが時代や作った人からどういった扱いだったかを知るのも面白い。

 

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色々と機会を作ってを北九州に行っているが、まだまだ見所がありそうなので、もう何回か行く必要がある。

横浜で資料館・博物館に行く(3つ)

横浜で日曜日を過ごす事になったので、博物館・資料館に行った。

1.海上保安資料館横浜館

通称:不審船博物館。工作船から押収した物品や弾痕が残る工作船を展示していたり、割と生々しい。

そういえば、対処に当たった巡視船については記載されていたけど、上空から監視してた飛行機についてはあまり触れられてなかった。不審船博物館はデートスポットとしてNGみたいな話をSNSで見かけたけど、私が出るタイミングで若い男女2人連れが入っていってた。

資料館の横に「あきつしま」が停泊していました。

2.横浜税関資料展示室

税関は税をとることとと、関所になることという説明がよく分かった。

3.神奈川県立歴史博物館

古代から現代までの神奈川県に関する歴史が展示されている。神奈川県の歴史というと、鎌倉幕府とか、ペリーとかぐらいしか知らなかったけど、古代の出土品から沢山あって勉強になった。

 

2023年の本best3

Best3以外はこちらです。

ikatake.hateblo.jp

大災害の時代

www.iwanami.co.jp

こちらについては、記事にしているので、お読み取りください。

ikatake.hateblo.jp

 

新説 徳川家康

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400ページ、注釈500個の分厚い新書。注釈500個の内、9割ぐらいはソースの提示*1なので、追加・捕捉情報としての注釈はそんなに多くない。

これまでの研究で提示されていた説に対して、最近見つかった一次史料などを用いて、自身の説を提示する。という流れで記述が進んでいきます。書状を引用している箇所も多いので、ちょっと読むスピードが遅くなりがちですが、引用の後に内容の概略が記載されているので、フワッと読んでおけば良いと思います。

歴史を研究している人の本を、これまで余り読んだことがありませんでしたので、歴史の研究者が考えていることや研究の過程の一部を覗き見るような感覚で読むことができて新鮮でした。

 

ビヨンド!

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KDDI労働組合が20周年記念に発行した本。周年行事で周年誌を作ることは多いと思いますが、一般書籍として出版したのは珍しい事例だと思います。

KDDIKDD、DDI、IDOの3社が合併してできた会社ですが、合併元の旧3社のうち労働組合があったのはKDDのみでした。そのKDD労働組合が合併の前に実施した委員長を選ぶ選挙で、ユニオンショップ協定*2の維持にこだわらない委員長候補が当選します。会社との交渉で、合併後のユニオンショップの維持が難しそうということを反映しての選挙結果ですが、オープンショップの組合として合併後に地道な組合員の加入促進活動が続きます。

合併後の組合員加入促進活動は様々あり、組合員の少ない職場に出向いて説明会をするのは勿論のこと、新規加入者の組合員費を期間限定で下げたり、血管年齢を測るイベントをやったりといった取組が掲載されています。通常、こういった悪戦苦闘の内容は労働組合の内部で記録しているに留めていることが多いのですが、一般の書籍として掲載しているのは勇気が必要になったと思われます。

ただ、各種の加入促進活動でも組合員が大量に増えるということはなく、むしろ以下の2点のような外的な要因によって組合員が増えた時期があった事も記載されています。

  1. 労働組合があった会社を吸収合併
  2. 会社の事業再編

1.の例で記載されているのは電力会社*3が作った通信会社であるパワードコムを吸収合併した際に、パワードコム労働組合を統合した事例です。数年後には旧パワードコム労働組合の出身の方がKDDI労働組合の委員長に就任していたりと、スピーディーな労働組合の統合ができたように読めました。

2.の例では会社が「○○事業の再編を行う」と対外発表した際に、不安を募らせた○○事業の従業員が労働組合に加入することで、労働組合と会社が交渉している内容を得ようとしたり、自分たちの声を労働組合経由で届けたり、といったことを考えてのことと思われます。

また、2.に関しては「色々な加入促進活動をやっても結局、自分の立場がピンチにならないと組合員として加入してくれないのか…」という厳しい現実を垣間見ることができました。

厳しい局面が続いても諦めずに組合活動を継続し、また新しい世代へと、バトンをリレーしていったことは頭の下がる思いです。

*1:「何年何月何日 ○○宛××書状」や、既存の書籍の何ページか、など

*2:社員は基本的に組合員ですよ。という協定

*3:厳密に記載すると、旧一電…地域独占の電気事業会社

2023年に読んだ本

今年は39冊読んだそうです。

ikatakeさんの読書記録

読書の記事を書いたのは7回らしいので、32冊は闇の中という計算になります。ちゃんと書いた方が良いですね。

読書 カテゴリーの記事一覧 - いかたけの備忘録

 

読んだ本の中で感想が残っているのを振り返ってみようと思います。

 

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ファイト・クラブ」で有名な人の新作。ファイト・クラブが時代を先取りした感じの傑作だったからか、現実が酷くなってしまったからか、それほどの衝撃を感じなかった。

 

原子力発電所で働く人々 近藤 駿介(著/文) - ERC | 版元ドットコム

恵値流技(エネルギ-)四方山噺 / 青木 成文【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア

電力関係の古い本。上は98年、下は93年。原子力発電の扱いが昔からあまり良くなかった事などがわかるので、ちょっとした資料的価値があるかも知れない。ちなみに上の本は発電所に女性の従業員が採用されだしたあたりのようで、『○○課の紅一点』とか『××グループのマドンナ』といった化石的表現を読むことができる。

 

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明治維新で帝国を作ったけど、国をまとめるために神話に頼っていったら、神話の方に依存しちゃって困っちゃったね…。といった内容でした(うろ覚え)。

 

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結構分量があります。あと、あんまり家の外で読むのも…。という内容であったので、入浴中にチマチマ読む本として積んでいたところ、読み終わるまでに結構時間がかかってしまいました。筆者がインタビューして得た大量の事例に圧倒されました。ただ、どうしても事例がアメリカ中心になってしまうのが難しいところですね。このテーマで日本語の本は中々ないので貴重。

 

ドリフターズ 7巻( 平野耕太 ) | 少年画報社

今年はこの1冊しか漫画読んでない気がしています。

 

www.php.co.jp

www.shoeisha.co.jp

「そういえばビジネスモデル全くわからんな…。」と思って読みました。

身についているかは疑問ですね…。

 

実務 太陽光パネル循環型ビジネス – エネルギーフォーラム

太陽光パネルのリサイクル事業者を取材して、リサイクルの工法とか、技術的な特徴を記載しています。他に取り上げた本が無いテーマであると思います。残念なところは1つめに、図が見づらいところです。本で見やすいサイズに改変して掲載していないので、図内の文字を読み取るのが困難な図が散見されます。2つめは誤字が散見されるところですね。

 

bookclub.kodansha.co.jp

www.php.co.jp

昭和前半ではテロ・暗殺が発生したときに、一般の人々から賞賛されていた事が結構あったらしいのですが。それに至る背景や空気感が余り説明されておらず、理解できないところが残っています。別の本では解説されているのかも知れませんので、もう少し勉強の余地がありそうです。

 

www.hanmoto.com

馬と猫が可愛いので皆さん買いましょう。ちなみに、hontoのアプリで見ると、書店によって「写真集」の棚の「動物写真」コーナーに置いてあったり。「ギャンブル」の棚の「競馬」コーナーに置いてあったりするようで、探すのが大変かも知れません。

 

株式会社 商事法務 | よくわかる世界の労働法

印象に残っているのは2点

  • イスラム圏では労働組合がなく、その理由としてイスラム法で「1つの組織にリーダーは1人だけ」というのがあり、労働組合を作るとその原理原則に反するから。
  • ドイツなどEU圏ではよく(日本との差異として)知られるように産業別の労働組合が主流なんですが、企業内の交渉の主体として、ワークス・カウンシルというのがある。

 

www.pot.co.jp

経済学難しいですね…。さらっと読んだので、式の意味とかを噛みしめたり、出てきた概念を図に記載しながら、もう1回読んだ方が良いかもしれません。ちなみに、以下のリンクで全文読めるそうです。ブクログの感想欄で知りました。

Keynes "General Theory" Digest

 

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15年ぐらい前に東京都知事候補の政見放送で有名になった人を西日本新聞の記者が取材した本。本の中でも触れられているんですが、外山恒一が異常に物持ちが良いそうです。本の中でも、30年前のビラ・機関誌が掲載されています。最後の方に外山恒一が、我々の世代は武力闘争をせずにオモシロ路線で良かったけど、今後はオモシロ路線だけでは厳しいのでは。といった事を言っていて、少し怖いですね…。

 

 

読書感想文「核兵器 入門」・「原子・原子核・原子力」

www.seikaisha.co.jp

序盤が超高速で復習する核物理学という感じ。その後に想定される被害が何を基にもたらされるか、核兵器というと放射線がという危ない気がしますが、熱戦も危ないですよといった解説が続く。核兵器の動作原理の話もあり、最後の章は、国際政治学者の2人との座談会になっており、核兵器を持っている国々の間での駆け引きや軍縮の難しさが語られる。

ちなみに「メートル」が「メーター」と書かれるのが割と気になったんですが、一般紙だとどちらでも良いんでしたっけ。

核兵器の動作原理などの話は「核兵器 普及版」に詳しく記載されているので、少し興味が出た。ただ、5000円を超える大型本なのでオイソレと手が出ない。

www.iwanami.co.jp

こちらは科学史からみた、原子論や原子核放射線などの発見の歴史を丁寧に書いている。↑の本で超高速で通ってきた箇所を補強するには丁度良い。ただ、原子力が出てくるのが最後の1割にも満たない。原子力の利用についても古典的な断固反対のスタンスでしかなく*1、工学的な取組などはバッサリと切り捨てられている。

丁寧に科学史の発展は追えているけれども、道具としてどのように使われてきたか、そこから何を学んで、この先につなげていくか、といったところが弱いように思われる。

そういえば、同じような感想を以下の読書感想文でも書いた気がする。

「労働組合とは何か」読書感想文 - いかたけの備忘録

割と遠くの歴史を分析・解説するのは良い感じなのに、現在に近づくと説得力が乏しくなっていく所が似ている気がしている。

 

*1:原子力の平和利用はアメリカの国際戦略であることを強調するけれども、世界中に原子力発電所を作っているソビエト・ロシアの話はあまり出てこないなど、古い左っぽいスタンスが垣間見える。

読書感想文「大災害の時代」

www.iwanami.co.jp

日本の大きな災害として大正の関東大震災阪神・淡路大震災東日本大震災を取り上げている。著者が日本国内の政治・歴史学者なので、書き方が丁寧で良い。

本書で、政治的な混乱期に狙ったかのように大災害がやってくるという内容が記載されており、*1今まで知らなかったけれど、関東大震災は組閣の大命が降りてるけど組閣できてない状態でやってきた災害だった。

 

関東大震災では、火災旋風による夥しい死者(大雑把に書くと地震1割、火災9割)、情報暗黒による流言の発生と殺害の発生、後藤新平による創造的復興の提案と縮小。といったことが書かれている。

創造的復興とは復旧:"災害の前の状態に戻すこと"の対比として使われていて、災害を機に大規模な都市計画を実施して、近代都市として生まれ変わらせたり、より安全な街に作り替えたりといった指向をもった復興のこと。

関東大震災後では、後藤新平*2内務大臣が創造的復興を考案したんだけど、予算の都合や縦割行政や政党政治の関係とかで徐々に削られていく。多少は東京市あたりに引き継がれて縮小しながらも完成した部分もあるとのこと。

 

阪神・淡路大震災では著者自身が被災している。なので、ここからは歴史の本であると同時に著者の体験も入っている。また、被災した人や、被災自治体の長、幹部、関係者などへの聞き取りも行っている。

阪神・淡路大震災では、早朝の地震であったこと、風が穏やかであったことから火災旋風は発生せず、建物の倒壊による死者が多くを占めた。また、警察官が制服で街頭に出ることを奨励したり、ラジオを配布しまくったりして、情報暗黒による流言を抑える事になった。このあたりは関東大震災の経験から克服している点となっている。

当時の自衛隊の本格出動が遅れた原因として「社会党自衛隊を嫌っていたので遅れた説」があり、この本を読むまで、なんとなくそれで納得していたけど、そういう話でもなかった。初動が遅れた原因は情報をあげる仕組みにあり、情報が上がってきた後の判断には遅滞なかったとのこと。

 

東日本大震災では、阪神・淡路大震災で課題が露呈した情報の伝達はかなりスムーズになった。このように、大災害の歴史を踏んでいって、日本の社会が今までの課題を克服する歴史を辿っていくのも本書の面白いところであるが、また更に災害の側がそれを上回ってくる。

東日本大震災では津波の被害が甚大であり、また原子力発電所メルトダウンも発生した。災害復旧側の画期としては、トモダチ作戦:米軍の展開があったものの、原発事故の対処を巡ってギクシャクする場面もあった。

著者は東日本大震災の発生時には防衛大学校の校長であり、その後、復興構想会議の議長になる。この本では会議の内幕にあまり踏み込んだ記載はないものの、大変な苦労があったことが行間から読み取れる。

また、関東大震災では頓挫し、阪神・淡路大震災では地方自治体が音頭を取った、創造的復興という方針を、国の方針として明らかにしたことが、画期となっている。

 

 

以上、書かれている内容をかいつまんで紹介しましたが、これ以外の内容が100万倍ぐらい入っているので、皆さんにも読んでほしい。ただ、割と読む人を選びそうな本でもある。でも皆さんにも読んでほしい。

 

*1:私としては地震が人間社会を読み取ってやってくるわけないでしょ。と思いますが…

*2:初代台湾総督とか、ボーイスカウトの創設者だったと記憶している。